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菟原処女と二人の若者は、どうなったのでしょうか。
ある日、菟原処女の父親は、二人の若者を呼んで言いました。
「ここから少し西に行ったところに、生田川という川がございます。そこにはたくさんの水鳥が住んでおります。弓矢で、水鳥をしとめた方に、娘と結婚していただきたいと思います。」
娘とその両親が見守るなかで、二人の若者は、おいしげったあしにかくれながら、水面をすうっと泳いでいる水鳥の方へ近づいていきました。
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やがて、菟原男は、弓に矢をつがえ、水面を泳ぐ水鳥にねらいを定めると、きりきりと弓をひきしぼりました。そして、ヒューッと音をたてて、矢が放たれました。
弓からはなたれた矢は、見事、水鳥の頭に命中しました。
菟原男は、大喜びして飛びあがりました。
ところが、どうでしょう。矢が頭に当たる瞬間、どこからともなく飛んできた矢が、水鳥の尾羽根にも当たりました。尾羽根というのは、鳥のおしりのところに生えている羽のことです。
そこにいるみんながおどろいて、矢の飛んできた方角を見ますと、そこには、茅渟がいて、ほこらしげに弓を高々と上げています。
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途方にくれた菟原処女は、とうとう決心しました。
父と母に別れの言葉を述べると、娘は、さっと身をひるがえし、あっという間に、生田川の流れに飛びこみました。
これを見た娘の両親は、びっくりして声を出しました。
両親がさわいでいる様子から菟原処女が川に飛びこんだのを知った菟原男と茅渟は、助けようとでも考えたのでしょう、先を争うように、川の流れに飛びこみました。
しかし、いくら待っても、三人のすがたが、ふたたび水面にうかんでくることはありませんでした。
かなしい恋に終わった菟原処女と二人の若者のお墓は、今でも六甲山のふもとにありますと。
(おわり)
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